父と兄が起業しており、自分も若いころは個人事業主をしていたのですが、収入の足しにコールセンター業界へ足を突っ込んだところ、いつの間にかどっぷりはまっていました。コールセンターでは、皆さんが想像されるような電話対応やメール対応だけではなく、バックオフィス業務など多種多様な業務を担当した後、現在はコミュニケーターを支えるチームリーダーをしています。BBTに入学後、通院していた治療院の経営支援を「学びの実践」として始めたところ、「ITツールのユニバーサルデザイン化」に興味が出てきたこともあり、一般社団法人「啓治泉」を設立し、代表理事に就任しました。「働き方改革」の一環で注目されつつある、「複業」や「パラレルキャリア」を実践しております。
個人事業主の経験はありましたが、私には正社員経験がありません。そのこと自体は、たいして気にしていなかったのですが、40歳を迎える頃に、正社員の方々が20代のうちに身に着けるようなビジネスの基礎がまるでなく苦労し始めました。また、職場の同じ職位の方々は10歳近く年下であったこともあり、自分が健康で働ける時間が周囲より少ないことにも気づきはじめ、収入を上げるスピードを他の人より速くしなければ、経済的にも精神的にも余裕を持った生活が送れなくなるという危機感が生じたのです。「何か自分に付加価値をつけなくては」と焦って資格取得などの情報収集を始めたところ、日本でもMBAを取得できることを知り、時代の変化にとても驚きました。そこで、「足りない経験は知識で補おう。ビジネスというものを徹底的に学んでみよう」と決意し入学しました。
仕事を辞めるわけにはいかなかったので、通信制大学院に選択肢が絞られました。それでも選択肢は複数ありましたが、いつでも、どこでも、さらにモバイル端末でも自分の好きなタイミングで講義が見られると謳っていたのは、当時BBTだけでした。そして、①「RTOCS(Real Time Online Case Study)」という独自のメソッドがある②「実践」を重んじている③講師陣がビジネスの最前線で活躍している一流の方々ばかり、という3点が決め手となり入学を決意しました。また、「パートのおばさん」が一生会うこともすれ違うこともないような方々と「生徒同士」としてフラットに議論できることも魅力的に感じました。
正直、克服できたとは思っていませんが、少なくとも入学前よりは理解が進んだとは実感しています。『アカウンティング』は、会計の知識がゼロからのスタートでした。でも、テキストにあった「会計を学ぶことは新しい言語を学ぶことと同じ」という助言がとても腑に落ちて、気持ちは救われました。決算(BSやPL)の作り方も、やはり用語が入ってこなかったのですが、RTOCSへの取り組みや様々な分析法を学ぶ際に、「何のために使われた費用か」「割合は適切か」「今後の新規事業や成長戦略にはどういった資産配分が適切か」といった観点からの考察を求められたので、用語というより数字の意味、つまり本質を探っていけるようになったと思っています。「数字が物語るストーリー」に元々興味があったのも、よかったのかもしれません。
私は『日本の国家戦略と税制』を一番に挙げたいです。国を企業と例えるなら、事業は「政策」であり、収入源は「税金」となります。それを念頭に置いて、世界各国の税制度の始まりなどを聞くと、その国の地理的歴史的、あるいは民族的背景が見えてきます。さらに、日本も含めた各国の税制は国家の成長戦略と密接に絡んでいるわけですから、企業とはスケールや次元が全く異なってきます。しかも、ビジネスをやる上では、法や税制を守る必要があり、時にそれらが大きな壁となりますから、国家の制度を無視することはできません。こういった内容を元国税庁長官を務められた先生からうかがえたのは、他では得られない本当に貴重で刺激的な体験でした。先生の講義もわかりやすく丁寧な内容でした。
AirCampusには過去講義の視聴、無限のディスカッションの場、様々なビジネスに関する資料、といった素晴らしい環境が整っています。それがいつでもどこでも、モバイル端末でも利用できるということは、それを活かすも無駄にするのもすべて「自分次第」という厳しい自己責任に委ねられていることを意味します。前提知識や予備知識がないなら、ないなりの学びとなることをあらかじめ覚悟し、こうした環境を最大限利用すれば良いと思います。
何事も「言い訳」にしたところで、ない時間は作れません。シラバスが公開された段階で、すべての締め切りを確認し、スマホなどに覚えさせることまではやりました。が、そこから逆算して、いつまでに何をどれくらい進ませておけばいいのか、という進捗の予定を立てなかったのは仕事と家庭とのバランスをとる上では大きな失敗だったと反省しています。「1日を50時間にする魔法」はないのです。
家庭については、当時両親の介護の真っ最中でした。このタイミングで入学した自分に問題はありますが、子供の教育に大変理解のある両親だったので、まだコミュニケーションが取れるうちは「アンタはすごいね」と応援してくれて、大変励みになりました。介護は、育児と違って先が見えず、突発的なことが頻繁に発生します。両親は在学中に逝去しましたが、学校にはとても配慮していただき、感謝しています。
BBTはインターネット上で完結する「サイバー大学院」ですから、当然、通信に問題が生じると、そこですべてがストップします。何度ネット喫茶に通ったかわかりません。オフラインでもテキストを読んだり発言の下書きなどはできますが、通信が復活すると、議論が大分先に進んでいるケースは多々ありました。特に、2018年9月の北海道地震の時は停電も伴いましたので、学校側の配慮を以てしても、遅れを取り戻すことは容易ではありませんでした。また、任意参加であるスクーリングは、私にとっては「一生会うこともすれ違うこともない方々とリアルに話せる貴重な機会」だったので、可能な限りスクーリングへは参加するようにしていました。やはり、サイバー空間では得られないプライスレスな体験ではありましたが、コストはかかりました。
入学前と決定的に異なる点は、何を見てもRTOCSしたくなる、という一種の「病気」にかかったことです。素晴らしい理念を掲げる会社を見た時、新しいサービスや商品が必要となった時、国や自治体の選挙が行われる時、ともかく何か気になる人、モノ、サービスを見かけた時、「これは信用に値するのか?どれを選ぶべきなのか?」という疑問がわくのは当たり前のことだと思います。その答えを出す手段が、私の場合はRTOCSと同じになってしまいました。そこまで必要のない些細なことであっても、「財務はどうなんだ?」とか「競合や市場の動きは?」という思考回路が出来上がってしまいました。
多種多様な職種や職位の方々との出会いは、「財産」です。起業されている方はもちろん、金融、商社、大手メーカーのエンジニアや経営中枢の方から、ソムリエや製麺所の5代目まで多岐に渡る仲間に出会えただけではなく、「パートのおばさん」にも親切に同等に接してもらえたことで、肩書きによらない自分の人間性やスキルに自信が持てました。また、他業界のお話も新鮮で、いかに自分が狭い世界で暮らしていたかを実感しました。仕事上でも、視野が広がりました。コールセンターの現場では、その特性上、発注元の情報は数字も含めて業務資料として自動的に入ってきますが、実は、自社の情報はなかなか入ってきません。給与は自社からもらっているわけなので、自社の動向は以前から気になっていました。BBTに入ったことで自社のIR情報が多少わかるようになり、生き残るための成長戦略に合致しているのかといったことが具体的に見えてきました。
私は資金もスキルもない「パートのおばさん」です。ただ、国内外にいるたくさんの仲間やOB、そしてBBTの講師陣が、私にとっては財産で武器です。自社でやりたいことを実現させるにも、自法人の活動を軌道に乗せるためにも、もちろん戦略が必要ですが、それと同じくらい「人脈」が重要だと思っています。私には備わっていない知恵やスキル、テクノロジーを借りることで、独りではできないことが可能になります。しかしながら、私自身が「自分の時間を割いてでも、力を貸してやりたい」と思ってもらえる人間であることが大前提なので、その部分は永遠に努力が必要だと思っています。
強い意欲や向上心、具体的な学びの活かし方などを明確に示すことができたから合格につながったのだとは思いますが、「パートのおばさん」であっても受け入れてくれたBBTの度量の広さには感嘆しました。ただ、当然ながら、扱いは他の生徒と同様なので、「経営者目線」を持つことが求められます。日ごろの仕事は、ボトムの現場なので、そのギャップはむしろ新しい視点、つまり、「ボトムやエンドユーザーの気持ちがわかる経営者の目線」を自分のアドバンテージととらえました。BBTで学ぶ「望ましい在り方」と現実とのギャップなど、それぞれの方が必ず直面するとは思いますが、柔軟さとポジティブさを持てば、自分を納得させられるのではないでしょうか。また、ご家族のいる方は、お金がかかることでもあるので、ご理解を得ることが必須かと思います。もし本科生が難しいようであれば、まずは科目履修生からBBTに触れ、ご自身の希望と合うか確認したり、ご家族の理解を徐々に進めていったりすることも、一つの方法としてお勧めです。