製薬企業のオンコロジー事業本部で、九州エリアの営業課長を務めています。大学院では理工学を専攻していましたが、入社後はMRとして茨城・千葉・東京で医療現場に向き合い、その後マーケティング部門で肺癌領域の分子標的薬のブランド戦略や市場分析を担当しました。現場と本社の両方を経験する中で「視座を高めたい」と感じ、BBT大学院でMBAを取得。現在は博多に単身赴任しながら、チームメンバーと共にエリア戦略の立案と実行に取り組んでいます。趣味は登山やマラソンで、休日にリフレッシュしながら学びと仕事のバランスを保っています。
MRとして現場で患者さんや医療者に向き合う経験と、本社マーケティングで戦略を立案する経験の両方を積む中で、意思決定の基準や優先度、時間軸が噛み合わないもどかしさを強く感じていました。また、部門横断のプロジェクトを推進する際に、個人の熱量だけでは人を動かし切れず、論理と信頼の両輪で合意形成を設計する力が不足していると痛感しました。さらにコロナ禍の面会制限や規制変更など不確実な環境変化に対して、意思決定が遅れてしまう自分にも課題を感じていました。これらを体系的に克服するために、MBAという選択肢にたどり着きました。
決め手は二つあります。一つ目は「明日の仕事に使える」実務直結型のカリキュラムです。経営戦略やマーケティング、アカウンティングを単なる座学ではなく、実際の企業経営を題材にしたRTOCSで毎週仮説と検証を回す設計に惹かれました。二つ目は受講生の多様性です。製薬業界にいると視野が狭くなりがちですが、BBTには金融、IT、コンサル、スタートアップなど様々な業界の方がいて、同じ課題に対して全く異なる視点からの打ち手が飛び交います。この越境学習の環境が、自分の視座を広げてくれると確信しました。
理工学出身で営業畑を歩んできた私にとって、財務分析やアカウンティングの科目は最初かなり苦戦しました。損益計算書やバランスシートの数字を読み解くだけでなく、そこから経営判断につなげる思考が求められるため、最初は講義についていくのが精一杯でした。克服のきっかけは、実務で活用している同期に基礎を教わりながら、自社の財務データを使って実際に分析してみることで、数字が「意味のある物語」として見えるようになりました。苦手だったからこそ、今では意思決定者が見ている視点を理解する武器になっています。
一番タメになったのは、経営戦略論とRTOCS(Real Time Online Case Study)です。毎週、実在する企業の経営課題に対して「自分が社長ならどうするか」を1週間で考え抜き、アウトプットする。このサイクルを2年間繰り返したことで、課題を構造的に分解し、限られた時間で仮説を立てて打ち手を設計する”型”が身につきました。この習慣は今の業務にそのまま活きていて、エリア戦略の立案スピードが格段に上がりました。正解のない問いに向き合い続ける経験が、不確実な環境での意思決定力を鍛えてくれたと感じています。
正直、入学前は「オンライン中心で本当に深い学びが得られるのか」と不安がありました。しかし実際に始めてみると、AirCampus上での議論は時間をかけて考えを練ってから投稿できるため、対面以上に本質的なやりとりが生まれることも多かったです。また、経営の全体像を体系的に理解できたことで、自社の意思決定がどのような構造で行われているのかを俯瞰して捉えられるようになりました。リアルな交流機会もあり、同期との人脈は修了後も続く財産です。「学ぶ」だけでなく「使える」教育だと実感しています。
私が心がけたのは「完璧を目指さず、自分なりの型を作る」ことです。具体的には、週次で学習スケジュールを明文化し、平日は早朝45分のインプットと夜60分のアウトプット、休日は2時間を学習に充てました。日中は仕事に100%集中すると決め、オンとオフを明確に分けることで、どちらも中途半端にならない仕組みを作りました。家族には入学前に相談し「この時間は学習」と合意を得て、会社にはスカラシップを申請し「必ずやり遂げる」と宣言。退路を断つことで、忙しい時期も継続できました。
一番苦労したのは、仕事が繁忙期に入り学習のペースが落ちた時期です。オンライン中心の学びは自由度が高い反面、進捗が滞ると孤独を感じやすく、「自分だけ遅れているのでは」と焦ることもありました。そんな時に救いになったのが、同期や教務部への相談です。オンラインでいつでも声をかけられる環境があり、学習スケジュールの見直しや気持ちの切り替えを一緒に考えてもらえました。人と比べず、自分のペースで積み上げることの大切さを学んだ経験でもあります。一人で抱え込まないことが、長期の学びを続ける最大のコツだと思います。
最も大きな変化は、課題の定義を「現象」ではなく「構造」で行うようになったことです。例えば、エリアでの処方停滞を単なる「情報不足」と捉えるのではなく、KOL(Key Opinion Leader)間のネットワーク構造やアクセス制約、院内意思決定の非対称性に分解し、介入の優先順位を設計するようになりました。また、RTOCSで鍛えた短期アウトプットの習慣により、施策の仮説検証を週次で回し、勝ち筋を早期に特定できるようになりました。結果として2023年・2024年と連続で営業目標を達成し、個人の成果をチームの仕組みとして再現できるようになっています。
一言で言えば「ものの見方」が変わりました。以前は目の前の課題に対して経験と勘で対処していましたが、今は俯瞰して本質的な問題を把握し、解決策を構造的に設計できるようになりました。また、他部門との連携においても、安全性・メディカル・マーケティングそれぞれの意思決定基準を理解した上で、合意形成を設計できるようになったことで、施策の実行スピードが格段に上がりました。さらに、自分の活動を仕組化する意識が芽生え、属人的なスキルに頼らないマネジメントへと進化できたと感じています。
目標は、患者さんの価値を起点に事業を設計できる経営人材になることです。臨床価値・安全性・治療アクセス・費用対効果を同時に満たす打ち手を、規制や制度の中で最適化していく。そのために、BBTでの卒業研究テーマを社内で小さく実装し、成果が出たら仕組みとして標準化し、将来的には業界のスタンダードにまで育てたいと考えています。不確実性の高い時代だからこそ、現場に根差した小さな実践を素早く回し、価値が確認できたものをスケールさせる。そんな「患者価値起点の事業リーダー」を目指して、これからも学び続けます。
忙しい方にこそ伝えたいのは、MBAは「立ち止まるための時間」ではなく「日々を回すための型」になるということです。視座が上がると、同じ現場でも課題の定義と打ち手の精度が変わり、成果の出し方が変わります。完璧主義にならず、週次の小さなアウトプットを積み重ねて翌週の業務につなげる。それが2年間で大きな差になります。肩書きを変えるためではなく、現場で成果の再現性を生むための投資だと捉えてほしいです。無理をしない、人と比べない「自分なりの型」をつくれば、学びは必ず成果につながります。一歩踏み出す価値は、きっとあります。