環境問題は、騒音振動のように日常身近に感じるものから地球温暖化による局所的豪雨や生態系の変化等世界的な合意形成に基づく対応が必要なレベルのものまで存在します。問題の解決には、原因の解明と原因者に対する科学的かつ効果的な規制の枠組みの制定と十分な周知が不可欠です。一方、規制には、その内容によっては企業経営や地域経済を過度に抑制する可能性もあり、施策の策定には十分な検討が必要です。私が携わっている土壌汚染対策は、人の健康被害の防止が目的ですが、普段は注目度の低い施策です。しかし、調査、浄化に伴う費用負担、不動産価値・流動化への影響、M&Aにおけるデュー・デリジェンスの対象等企業経営に与える影響は少なくありません。現在注力している職務は、資力に乏しい中小企業の経営への影響を軽減すべく、当大学院で学んだ実践的経営スキルを積極的に活用し、周知や費用軽減策等支援活動を推進しています。
私は、BBTが提供する「経営管理者育成プログラム」の「問題発見基礎スキル講座」「問題解決実践スキル講座」を受講していましたのでMBAのコースの存在は把握していましたし、興味も有していました。しかし、入学の障壁となったのが学費で、代替としてBBTが提供する他の講座を受講するに止めていました。しかし、東日本大震災で自宅を含む故郷が被災したこと、政治家が政争に明け暮れ、復興が一向に進まないこと、国家債務や行政運営に対して所属する地方自治体職員の危機感が希薄であったこと等から将来への不安と焦燥を感じ、応募を決意。秋期入学募集期間の締め切り間近に入学願書を提出しました。なお、私は入学当時も現在もそうですが、より高い学びの場で自分を鍛え、それを社会に還元するとともに、社会の変革を担う一人になるというものが本来の目的であり、MBAの取得が目的ではありません。履修管理もそれを意識した内容にしています。
実践を標榜し社会人を対象とした他の経営大学院について、講義内容や教授をホームページで確認したことはあります。しかし、それは当大学院で間違いない旨の確認のために行ったようなものです。前述のように「経営管理者育成プログラム」の受講により効果を実感していましたし、競争の激しい実業界で多くの実績を残され、現在もなお各分野で活躍している多彩な教授陣の存在、そして毎週驚嘆させられていた大前ライブなどは、他校には真似できないBBTが提供する際立った価値であると確信し、迷いはありませんでした。
マーケティングを体系的に学んだ経験はないものの、必修科目であるマーケティング概論は入学式での平久保教授の「型を学んで型を壊す」という熱い御発言により、強く惹き付けられるものを感じていました。講義中苦労した点は、「型を学ぶ」うえで必要な課題図書の読み込みと数名のメンバーで行うGW(グループワーク)の遂行でした。課題図書の読み込みを通勤電車や昼食後に計画していましたが、マーケティングの古典である、あの分厚い課題図書「マーケティング・マネジメント」を毎日持ち歩くことと他の教科と並行して読み込むことに大きな負担を感じていました。一方、GWでは、リーダーの決定から課題の設定まで遅れ、後の作業に影響する事態に至り、大いに反省する結果となりました。結局、在学中は単位を取得したものの「克服した」といえる状況に至ることは出来なかったことから、現在も現場を見学するなど学びを継続して成長を志しています。
最も影響を受けた講座の一つは「企業変革」です。自律性が欠如した組織に属する私にとって、組織を変革し成長させることは、入学に際し最も必要としたスキルの一つでした。担当の宇田教授は、郵政民営化における経営戦略や現場の改革で非常に重要な役割を担った方です。私は、そこで実践された内部統制の変革プログラムの策定・実行やリーダーシップという経営に携わる者にとって必要なリスクを把握し、対処する術を学びました。なお、本講座にはその奥深さを感じたことから、1年次に単位を取得したものの、3年次に敢えて再履修を申告し、議論に参加しています。学びの集大成である卒業研究では、強固な既得権益を有する業界の変革をテーマに取り組みましたが、担当の深尾、炭谷両教授から本質的問題から「逃げている」「真因ではない」と指摘される等未熟さを痛感させられました。しかし、この時受けた熱い指導は、今の仕事に活きています。
従前の教育機関では、教授による一方通行の指導や考え方の踏襲が重視されていました。しかし、当大学院では、まず教授自ら「私が一番学んでいる」と公言することに驚かされました。議論では多様な分野で活躍する学生の経験や考え方が交わされ、それに教授やTA、LAが指摘し、思考が触発されていく過程は、当大学院の実践を強く意識した表れと言えます。また、「教えない大学院」を標榜するように一方通行で受け身の「teach」ではなく、自ら情報を集め、問題を発見し、解決策を提言し学生間で主体的に議論する「learn」であることにより、自律性、自発性が育まれます。注目すべき重要なスキルとしては、リーダーシップの発揮とあえて反論することで議論を深め、問題点を鮮明にする「反論する義務」を果たすことです。反論は、当初不慣れなうちは気分を害することもありますが、反論を受け入れることで自分の思考の癖を把握でき、成長に寄与します。
経営の学びの初心者である私は、破綻するような学習計画の回避を心掛けました。当大学院での学びは非常に新鮮かつ刺激的です。学生が成長し現実の世界で成果を出すための方策として、議論の場で自分の意見を論理的に説明する義務が課せられます。そのため、入学当初は高揚感と義務感から午前2時前後までエア・キャンパス(AC)に参加していましたが、睡眠不足による仕事への影響を考慮し、2か月目から24時で切り上げることとマイペースでの学習を心掛けるよう方針転換しています。また、経営や問題解決をより深く体系的に学ぶ意識を有していたこと、3年目以降は安価な学費で履修可能な当大学院のメリットを最大限享受すること等を重視し、3年での卒業を目指しました。これにより、若干の余裕が生まれ、3年目での卒業研究と並行したM&A関連の講座の履修と前述した企業変革の再履修、卒業研究における新潟や岩手の現地調査を実現しました。
人生に「突然」はつきものです。例えば、それが急な出張であったり、災害の発生であったりと予測の可否や影響の度合い等状況は三者三様です。私の場合は、入学2年目に人事異動があり、2年連続して伊豆諸島や小笠原諸島等内地ほどネット環境の整っていない島しょ地域への出張が課せられました。当時は出張が講座の開講と重なり受講できず、結果教務課から受講状況に対する「教育的指導」を受けることとなり、焦りを感じた経験をしています。また、ネット受講には致命的なPCのトラブルに肝を冷やすこともありました。試験の答案をHDDに保存していても、HDDの不調によりデータを喪失する体験もしています。この時は呆然としましたが、外付けHDDにファイルを保存していたことから難を逃れました。「通学」の負担がない反面、受講環境の維持管理は欠かせません。
私の組織では、例えば「書類に記載ミスが多い。それならばチェックリストを作ろう。」というような単純な現象裏返し的発想が横行している一方、思い付きや思い込みによる施策展開が後を絶ちません。しかし、私は当大学院修了後はインタビューや現場確認による行動分析を行うなどし、本質的な問題は何かについて、仮説を構築し、証明することを心掛けました。特に、成功のカギとなる要因「KFS(キー・ファクター・フォア・サクセス)」は何か、解決策の基軸「SDF(ストラテジック・ディグリーズ・オブ・フリーダム)」で要素や必要性、有効性、即効性、波及効果等を検討した結果、どう優先順位付けし、実行性を担保していくことについて、その効果を実感しています。このスキルを身に付けるためには、コンサルタント出身の教授陣による指導と同期生による議論が有効です。
これまでの私は環境問題の切り口を技術的な視点のみで捉え、結果経営者への説明が納得感を欠いたものに終始していました。しかし、当大学院における実務を重視した学びにより、経営に与える環境問題の必要性、重要性を訴求できるようになり、打ち合わせでSDFを意識した解決策を提言することにより、共通認識や理解が促進されるようになりました。所属する自治体では道半ばですが、問題意識を共有する他の自治体の職員とは議論が促されるなどしており、問題解決の仲間も僅かづつですが着実に増えつつあります。
首都圏には巨大災害の発生が、又日本全体では財政破たんの危険性が差し迫っています。しかし、政治や行政にその切迫感を感じ得ないのは私だけではないはずです。一方、私のかつての職場に目を向けると、環境政策の立案者や環境問題を大学で学んできた者が変化に晒される方々の現状を直視しようとせず、又積極的に支援する姿勢は皆無でした。私は、東日本大震災の発生とその後の状況、又修了式における学長の「人生を引き算で考え、悔いのない人生を送る。」旨の祝辞、BBTの教授陣が身をもって示した社会を変革する姿勢を目の当たりにし、私の使命であり目標を「次世代を担う人材を育成する」ことに定めました。私は今後もBBTでの学びを継続する一方、本質的な問題の解決をできる人材を育成し、又ともに地域社会を支え続け、発展させていけるよう取り組んでいく意向です。同時に、被災地の再生を目指すべく、地域の若年層の学びの支援を行っていきます。
入学式の祝辞でアカウンティング担当の櫻庭教授は「人生における大きな投資」という表現は用い、今後の学びへの期待を促されました。投資には費用の他に時間や学びの労力が、リターンには問題解決のスキルや実践的経営の知識等昨日とは全く異なる、日々の成長を実感する自分があります。また、修了後も履修した講座のスクーリングへの招待や学びのイベント等成長の場が提供されます。しかし、これらのリターンは一生モノであるものの、その獲得には従前の慣習を廃棄し、自らに与えられた人生の使い方を変える必要があります。入学前に自分の目的は何か、それとBBTの教育理念や提供価値が合致するか等納得いくまで検討したうえで応募してください。その一方、当大学院は一部のエリートのためのものではなく、明確な目的を持つ方を受け入れ、徹底的に鍛えてくれます。私と同じ地方自治体の方々も積極的に応募し、学びを社会に還元されるよう期待しています。