中小日本食輸出商社で貿易実務全般に携わっている為、国内市場の縮小、海外日本食ブームなどの影響によって海外の日本食市場環境も大きく変わってきていることを肌で感じながら仕事をしていました。相対的な自社の優位性が失われつつある中、「これまでの延長線で仕事を続けているだけで良いのか?」との思いを抱きながらも、具体的に何をしたら良いかが自身の中でも定まらず、日々の業務に追われる毎日でした。
社内のみんなが一生懸命に頑張っているものの、それぞれが個々に頑張っているだけでは将来的に会社が良くなっていくとは思えませんでした。そんな状況を変える為には誰かが大局を俯瞰し、情勢を見極め、会社の進むべき方向性を示していく必要があると考えました。「自身がその役割を果たせるようになりたい」と思ったのがMBA取得を目指したきっかけです。
他の大学院(通学制)も検討しており、実際に授業を覗かせて貰ったり在校生から話も聞いたのですが、扱っているテーマが古かったり、MBA取得だけを目的としている人もいたりと、実践力を磨きたい自分のイメージにそぐわない部分がありました。また海外出張も多い為、授業の出席率も問題になりそうだということもわかりました。BBT大学院はRTOCS(Real Time Online Case Study)を売りにしていたことと、オンラインでの受講が可能であるという部分が自分の求める学習環境に相応しいと考え入学を決めました。
『コーポレート・ファイナンス』はこれまでの実務で全く触ったことがない講義だったので苦戦しました。基本的な所を講義と教科書をにらめっこして要点を押さえていくのですが、実際にそれをどう使ったら良いのかが掴めずにいました。しかしファイナンスを専門とする同期とディスカッションをさせて貰うことで、実際の仕事の現場でどのようにファイナンスを活用しているのかがイメージ出来るようになり、それからは学びがスムーズになりました。
RTOCSを2年間で約100題取り組んできたことが自分の中で一番の大きな自信になっています。RTOCSはPSA(Problem Solving Approach)の実践トレーニングですので、本質的課題の発見から、解決策の立案に至るまで反復練習で体に叩き込むことが出来ました。また自分の意見をしっかりと持っておくことで、同期とのディスカッションや大前学長の考え方から学ぶことも多かったように思います。
大学院の講義は組織人材論、企業倫理、起業論、アカウンティング、など多岐に渡りましたが、それぞれの講義が有機的に絡み合って、ビジネスパーソンとしての備えておくべき教養を体系的に学ぶことが出来ました。更に学長科目では学長の実体験や分析に基づく話を聞くことが出来て、単なる「知識」や「スキル」としてではなく「考え方」や「生き方」についても学ぶことが出来て、それが今とても役に立っています。
大学院に入ったからと言って仕事量が減る訳でもなく、家族との時間を犠牲にする訳にもいかない中で、いかに隙間時間を活用するかが自分の大きな課題でした。オンラインでいつでもどこでも学べる環境というのは思った以上に便利で、極力机に座って勉強する時間を少なくすることで、仕事、勉強、家庭の時間を捻出できたと思います。(それでもやはり家庭の時間はかなり犠牲にしましたが・・・)
BBT大学院の講義は講義視聴や発言回数など最低限これだけはやって下さいというものが設定されています。しかしそれをクリアしたからと言ってそれだけで十分に学んだと胸を張れる訳ではありません。考え方のトレーニングというのは、いかに繰り返し反復するかという脳の筋トレのようなものなので、出来る限りの時間をBBTにつぎ込みました。過度な強制をされない分、いかに妥協せず頑張るかは本人の自主性による部分も大きいので、その点には気をつけて取り組みました。
今の日本の置かれた状況を見ていても、これから日本全体が良い方向に進むイメージはしにくいのが現状だと思います。しかし細かく見ていくと、現状下で衰退している企業もあれば、その中でも成長している企業もあるのだと気づくことができて視野が広がりました。それからは厳しい環境下で生き残り、勝ち上がっていく為には悲観しているだけでは始まらないと物事を前向きに考えるようになりました。中小企業なので無い物ねだりを始めるとキリがないですが、どのようなチャンスがあるのかとポジティブに思考する中で色々な可能性を見出すことが出来るようになったと思います。
当初MBAのイメージは知識やノウハウの部分が大きいという印象を持っていましたが、実際に組織をマネジメントしていくにはIQだけでなくEQ(Emotional Intelligence Quotient)も大切であると考えるようになりました。相手を理屈で説き伏せるのではなく、どうやれば相手が動いてくれるかという部分にまで意識が向くようになったのは大きな変化だと思います。
巷では日本食が世界的なブームだと言われていますが、そのブームの火付け役となったのはアジアの人達で、海外日本食市場における日本人の存在感は日増しに薄まっていくばかりです。「日本食はこういうものだ」とプロダクトアウト的な発想で突き進むのは間違っていると思いますが、「顧客ニーズに合わせた」マーケットインの発想だけでも日本食の間違った知識しか持たない方へのアプローチとしては不十分な気がしています。日本の文化と市場のニーズにどうやって折り合いをつけていくのか、その為に誰と何をどうやって提案していくのか、非常にチャレンジングな課題ですが、その解を見出すべく頑張っていきたいと思っています。
BBT大学院に入って最初の驚きは「答え」ではなく「考え方」を問われる点ではないかと思います。与えられる課題に正解はありませんし、学長の考えが100%正しい訳でもありません。答えのある問題を解くことに慣れてしまっていると最初は面食らう部分があるかもしれませんが、このトレーニングこそが「答えのない時代」を生き抜く為の大きな力となる気がします。大変な分だけ学びを終えた時の自信も大きなものとなるはずです。頑張って下さい!