古波鮫 大己 さん

株式会社LIXILグループ

2015年3月卒 / 経営管理専攻

住宅分野の大手であるLIXILグループに勤務されている古波鮫さんは、「LIXILアクセラレーター・プログラム」の担当者として、新規事業の立ち上げに深く関わりました。アイデアを具体的に形作るには、構想力とそれを支える情報収集力が重要と考えられています。ここでは、そんな古波鮫さんに新規事業に関するストーリーを伺いました。

 

私の考え方・生き方 - Case Study & Interview

新規事業の立ち上げに重要な「構想力」と「情報収集力」

CASE1

人を巻き込むために必要な言葉を生み出す「構想力」

コンセプトによってキーパーソンを巻き込む

近年「アクセラレーター・プログラム」と称した、ベンチャー企業の先進的なアイデアやサービスと、大企業が持つ様々なリソースやアセットを活用して新規事業を立ち上げる手法が広がりつつあります。

当社の場合、おもに住環境という分野において、LIXILグループのリソースを活用し、ベンチャー企業と協業しながら新たな事業を創出していく「LIXILアクセラレーター・プログラム」を進めてきました。私は2016年4月から約1年間にわたって、このアクセラレーター・プログラムの企画、運用、そして最終的なベンチャー投資まで、一連の活動に携わってきました。新規事業の立ち上げに携わる事は、非常に刺激的で有意義な経験でした。

大企業は資金や人的リソースは豊富であることに加え、ブランドや販売チャネルなど多くのアセットを保有していますが、新規事業を立ち上げるための斬新なアイデアや行動力が不足しがちです。一方、ベンチャー企業には豊富なアイデアや行動力、スピードがある一方で、資金・人的リソース・販売チャネルなどは不足しています。
大企業の強みであるリソースやアセットと、ベンチャー企業の強みであるアイデアと行動力を組み合わせることができれば、新しい事業を創出できる可能性とスピードはぐっと高まるように思えます。

しかし、いくら大企業といえども、それらのリソースを簡単に提供できるわけではありません。長年かけて構築してきたアセットを使って何か失敗すれば、自社の信用を失う可能性もあります。さらに事業部門は、商品開発や生産・営業など、企業が収益を上げていく上で最重要な"must"の仕事で多忙な状況です。そんな中、新たな事業を生み出していくためには、「ベンチャーと一緒に、どうしてもそれをやりたい」という”want”を、関係者一人ひとりの中に生み出していくことが必要です。

”want”を生み出し、多くの人達を巻き込むために私が最も重要視しているのは、「コンセプトの言語化」です。
先進的な製品・サービスでは、そのベネフィットが顧客に伝わりにくいケースがあります。しかし、どんなに顧客の役に立つ商品・サービスであっても、顧客にそのベネフィットが伝わらなくては使ってもらえませんし、そもそもキーパーソンを巻き込むことすらできません。

「コンセプトの言語化」には、BBT大学院で学んだことが非常に役立っています。そこで、1つ目のポイントとして、ステークホルダーを巻き込むために私がどのようにしてコンセプトを作り上げたかについて、お話しいたします。

大前学長の「イノベーション」の発想法

BBT大学院には「イノベーション」という科目があります。この科目では大前学長が自身のビジネス経験を元に、思考の限界を突破する発想方法として、創造的解決法を体得するトレーニングを行います。具体的には10種類の基本編と、7種類の実践編で構成されているカリキュラムです。私はこの講義で学んだ手法をそのまま業務で活用していて、特に多用している手法は「Fast-Forward」と「What does this all mean?」 の2つです。事例を交えながら、簡単にこの2つの発想法をご紹介します。

◆Fast-Forward (早送りの発想)
Fast-Forwardとは「早送り」の事です。今ある兆しを捉えて、その兆しを早送りしたら未来はどうなるか?というように考えます。
例えば通信販売の配送について多くの課題があることは、誰もが認識していることだと思います。ネット販売の普及により荷物の量が圧倒的に増えたにもかかわらず、物流システムの整備が追いついていない、など様々な要因があります。また「送料無料」というサービスもその要因の一部でしょう。このような現状を踏まえると、現状の配送システムのままでは、近いうちにシステムそのものが破綻する可能性もあると考えられます。実際に、大手通販業者と宅配業者は、価格を含めた取引形態の見直しを始めています。これらは、ネット販売の成長率と宅配業者のキャパシティというファクトを観察していれば、誰もが数年前に予想できたことでした。

ここで、思考実験として時計の針を10倍速で回してみます。10年後のネット販売の姿はどうなっているでしょうか。

数年前までネットで「靴」を買うということは、あまり現実的ではありませんでした。これは欲しい靴が本当に自分の足に合うかどうかわからない、ということが原因の一つでしょう。靴はお店で試着して買うもの、という意識が強かったと思います。しかし、最近は同じデザインでサイズの異なる靴を複数送ってもらい、サイズが合わない靴は返品するというサービスが普及しつつあります。自宅のほうが店員さんの目を気にすること無くじっくりと試すことができ、意外に便利と思う人が多いかもしれません。

この販売手法が普及すると、1つの商品を販売するにあたり、物のやり取りが増える、すなわち物流への負荷がさらに高まるという事になります。現在の宅配システムのままでは、この負荷への対応は難しいでしょう。ここに機会があります。消費者の利便性を損なわない次世代の宅配システムを考えることは、新たなビジネスチャンスの発見につながります。非常に簡単な例ではありますが、このように思考を巡らすことはFast-Forwardのトレーニングになるのです。

まとめると、今まさに目の前に起こっている現象を大きな潮流が変化する兆しと捉え、頭のなかにある時計の針を進め、5年後・10年後を予測する考え方が「Fast-Forward(早送り)」です。


◆What does this all mean?
これまでFast-Forwardで、物流への負荷がさらに高まるという事を導き出しました。
ここでさらに、宅配を取り巻く環境について考えてみます。

大手通販会社は、翌日配送はもちろんのこと、地域によっては当日配送というサービスをユーザーに提供しています。ユーザーはすぐにモノが届くことが当たり前になっています。しかし、実際に荷物を届けに行くと、受取人が不在ということはよくあります。その場合、不在票をポストに入れて再配達することになってしまいます。この再配達が宅配業者にとって大きな負担になっています。

この再配達問題を解決するために注目を浴びているのが、宅配ボックスです。ただし、この宅配ボックスにも課題があります。
マンションなどに設置されている宅配ボックスでは、ボックスのサイズが小さくて荷物が入らないケースや、また数が限られているためすぐに一杯になってしまうケースがあるようです。また、そもそも古いマンションやアパートにはスペース的に設置が難しいことや、費用負担の問題があります。
戸建てであれば後から設置は可能ですが、設置にはそれなりに費用がかかります。荷物を受け取れなくても、宅配業者が無料で再配達してくれるわけで、あえて自ら宅配ボックスを設置する理由が見つからない、といったケースもあるようです。こういった様々なケースを踏まえてFast-Forwardで考えてみると、宅配ボックスの普及には意外と時間がかかるのではないか、という予測が出てきます。
話は変わりますが、私が担当したアクセラレーター・プログラムの中で、あるベンチャー企業が、スマホを使って施錠管理できる「スマートロック」を使ってサービスを展開していました。スマートロックは既存ドアに後から取り付けることができるデバイスで、特定のスマホアプリをインストールした人だけが扉を解錠できるという仕組みです。
このスマートロックについても、Fast-Forwardで考えてみます。現在はオフィス用途がメインですが、比較的安価で後付可能ということを踏まえると、何かしらのきっかけがあれば一般住宅にもかなり普及するのではないか、とも考えられます。

ここで、【Fast-Forward】で考えた、一見バラバラな要素を【What does this all mean?】で発想を飛躍させ、下記のようにまとめてみます。

【Fast-Forwardの発想】
・荷物量の爆発的増加により、再配達問題はますます深刻化する。
・再配達問題を解決できる宅配ボックスは、思った以上のスピードでは普及しない。
・安価で設置が容易なスマートロックは、普及していく。

【What does this all mean?(それら全てが意味することは何なのか?)】
・不在時にスマートロックを使って玄関の中に、直接荷物を入れるサービスを展開する。

このように、一見バラバラな要素を俯瞰して見つめた上で、「要は何を意味するのか?」「要は何ができるのか?」を発想することが、まさに【What does this all mean?】のアプローチです。

私の場合、ここでさらに発想を飛躍させて、コンセプトを考えるようにしています。このケースの場合、「結局、スマートロックを使って、玄関という空間をどう変えていくのか?」という問いに対して、「スマートロックで玄関を現代の土間にする」というコンセプトを導き出しました。

伝統的な日本家屋には土間がありました。土間では、炊事や農作業を行うなど、屋外と屋内の中間的な空間として様々な機能を有していました。現代の日本の住宅では、屋外と屋内を分けている場所は玄関です。しかし、多くの現代住宅の玄関は、靴を脱ぎ家に上がる空間(=屋外と屋内の境界線)としての機能しか果たしていません。

私は、この現代の「玄関」にかつての土間的な機能を持たせ、不在時に荷物を直接玄関に届けることで再配達問題を解決できないか、と考えたのです。もちろん防犯やプライバシーといった課題はありますが、スマートロックの活用により課題解決できる可能性が高まってきます。
このような「スマートロックで玄関を現代の土間にする」というコンセプトをベンチャー企業に提案したところ、非常に前向きな反応で、サービスの具現化に向けたアクションをスタートすることができました。

ここまで、新しいコンセプトを作るために私が実務で活用した手法をご紹介しました。新しいビジネスのタネを生み出すために、事実を丁寧に集めた上で、「時計の早回し」をした上で、「それら全てが意味することは何か?」という流れで発想してみると、思いもよらないアイデアが浮かんでくるかもしれません。

CASE2

書籍を活用した「情報収集力」を鍛え、アイデアを具体化する

情報収集はアイデアを出すための基本

さて、CASE1でご紹介した手法を用いてアイデアを出すには、情報を日々ストックすることが重要になります。「早送り」をするにせよ、「要はこういうこと」とまとめるにせよ、その論拠となるファクト情報があってはじめて説得力を持ちます。先ほどご紹介した平均世帯人数の推移など、できるだけ数字で変化を把握することも重要です。私は、情報収集の感度を高くし、有益な情報を集めるために、情報収集にはできるだけ時間とお金を惜しまない様にしています。

そんな私の主な情報源は「人と本」です。例えば、「アクセラレーター・プログラム」を通じて、多くの起業家やベンチャーキャピタリストの方々と話す機会がありました。彼らは最新の情報を得るために、本当に勉強をされています。そのような方々と話すこと自体が強力な情報収集になると感じました。

しかし、彼らにとって時間は貴重な資源です。自分の学びのためだけに彼らの時間を奪うことはできません。そのため、人から情報収集をする際は、自分自身も有益な情報提供が出来るように心がけています。

そこで、自分自身の情報収集はもちろん、他者に対して有益な情報提供をするためにも「本」は重要な情報源となるのです。ここでは私の読書を通じた情報収集や活用術をお話しします。

自宅の本棚はミニ図書館

私の読書スタイルは、電子図書や図書館を活用するのではなく、紙の本を中心としています。少し考え方が古いかもしれませんが、やはり物理的に存在するものに触れることで自分自身の記憶定着度も高くなると感じているからです。平均すると、だいたい週に2-3冊は本を購入しており、自宅には大体3,000冊ぐらいの本があります。場所に限りはあるので、年に一回ぐらいは本棚を整理しますが、基本的に読んだ本は処分しないようにしています。なぜなら、それらの本は自分の外部記憶装置として、何か閃いた時に思考をさらに深掘りするためのツールとして活用しているからです。

もちろん読んだ本の内容を全て覚えているわけではありません。目次だけ見たり、パラパラとページをめくったりして、その本のおおよその内容(=インデックス)を頭に入れている「半・積読」状態の本がたくさんあります。とにかくインデックスを頭にいれることを読書における最低限のゴールとしています。インデックスを頭に入れておきさえすれば、何か情報が必要となった場合、自宅の本棚に向かえばすぐに情報を得ることができます。

私は休日や夜に自宅でふとアイデアが出た時に、自室の本棚の前でよく「立ち読み」をしています。何かを思いついた瞬間、手元にそれに関する本が無いと、発想を広げることができず、非常にストレスになります。思いついたアイデアが、手元にある本のインデックスと関連を持ち出したとき、思考が一気に広がり始めます。そこで改めて内容を熟読し、アイデアをさらに具体化させていきます。ネットに存在している知識も活用していますが、体系だったクオリティの高い知識を確認するには、やはり本に軍配が上がると思っています。

本の選び方にも工夫を

本の選び方について、購入する場所はネット・書店ともに活用しています。ネットも書店も両方特徴があり、どちらが良いかとは思っていません。ネットで購入する際は、購読している書評メルマガやサイトのレビューを参考にします。書店の場合は、いま旬となっているテーマの本が平積みされているので、そういった本をまとめ買いすることもあります。その際は、まえがきや著者のプロフィールなどを参考にすることも多いです。

また、意識的に本のジャンルを偏ること無く、多様なジャンルに目を通すようにしています。例えばテクノロジー系の次はベーシックなビジネススキル系の本、その次は最近のライフスタイル・トレンドをテーマした本など、様々なジャンルの本を交互に購入するようにしています。

BBT大学院で学ぶ前から多くのビジネス書を読むようにしていましたが、今考えると、当時の読書は消化不良だったように思います。BBT大学院では、教科の中に「輪読会」という、課題図書のテーマに沿ったアウトプットをする課題があります。アウトプットとは、本の内容を要約するのではなく、自分自身のケースに当てはめ、具体的に考えてみる、という事です。例えば、経営学の本の中で営業組織についての記述があった場合、自社に当てはめると具体的にどのような組織になるか、というようなことを考えます。さらにこの内容をクラスメートと議論することにより、より深く本の内容を理解することができました。このような課題を重ねることにより、アウトプットを意識した読書体験が本の理解度を格段に向上させることがわかりました。

さきほど、「インデックスを頭に入れる」と述べました。普段はインデックスの収集を目的とした「軽い」読書を行いながら、自分が新たな課題に取り組む際はアウトプットを意識した「重い」読書をするという、2段活用を行っています。

さて、このようにして読書で得た情報を知識として整理しておくことで、CASE2の冒頭に申し上げた「人との対話」における情報収集時に、自分自身の見解を共有することができ、一方的に人の時間を奪うことだけでなく、相手に貢献できる可能性が高まります。日頃からの情報収集の一つの方法として、読書を是非活用してみてください。

Interview1:学びを振り返って

ビジネス書を読んでも活用しきれず、「頭の使い方」を変えるために入学を決意

入社以来、研究開発部門でキャリアを積んできました。社会人5年目の時に、それまでは上司の支持指示に従っていれば良いという仕事だったのが、自ら企画をして仕事を作り出さなければならない環境になりました。その時に、自分のビジネススキルを客観的に見ると、企画力がない、人脈もない、そもそもビジネスの基本を知らない、という事に気付き、大きな危機感を覚えました。

幸いなことに時間はあったので、片っ端からビジネス書を貪り読んでいました。しかし読んだ内容を思うように実務に生かせている感覚がなく、これは基本的な頭の使い方から変えなければダメだと感じ、「ビジネススクールで学ぶ」という選択を検討しはじめました。

ただ、MBAはかなりの費用もかかる上に、家族との時間も犠牲になるため、実際に行動に移すにはかなり躊躇していました。そんな時、妻の「死ぬ時に後悔するぐらいならやってみたら?」という一言で背中を押され、入学を決意しました。

私は入学した時点で、家族や仕事との時間の使い方のバランスを考え、3年で卒業するように計画を立てました。1年余分に使うことで、取得科目にも余裕が生まれました。例えば、BBT大学院の最大の特徴である、RTOCSや卒業研究などの高度なアウトプットを要求される科目にじっくりと取組むことができました。また同期以外の学友とのネットワークを構築することができました。

3年計画とは言え、やはり時間管理は卒業ギリギリまで悩み続けました。
・勉強時間の「時間割」をつくる。
・1人の時間を仕組み化する。
・通勤や移動などの隙間時間を最大に活用する。
といったアクションを実行し、毎週のように計画を見直しながら進めていましたが、仕事のトラブル、家族の体調不良など予定通りに進まないことは山ほどありました。しかし、そのような積み重ねが計画力、実行力の強化につながったと思っています。

正論だけで経営の意思決定はできない、そんなケーススタディが大きな学びに

在学中のエピソードとして強く印象に残っているのは、「ビジネス・エシックス」のケーススタディでした。経営者になりきって考えれば考えるほど、経営の意思決定の難しさを痛感しました。

ケースの中で正論を言うのは簡単です。しかし実際の経営者は正論だけを考えて意思決定をするわけにはいきません。「一般的に正しそうな決断」をした結果、会社は訴えられ、賠償金などの支払いによって倒産し、社員が路頭に迷ってしまう可能性もあります。自分や家族が、世間から誹謗中傷を受けるかもしれません。そういったあらゆるステークホルダーのメリット・デメリット、感情を踏まえた決断をしなければならない、そんな疑似体験を通して、経営者になることが「怖い」とさえ感じました。

いずれはそのような決断をしなければならない日に備えて、日頃から必死に学ばなければならない、ということに気付かされた科目でした

「頭の使い方」は期待以上に大変化した

卒業後に振り返ってみると、BBT大学院での学びの経験は「知識」「スキル」「マインド」それぞれに大きな成長をもたらしてくれました。

【知識】は、上述のように、入学前は、ビジネス書を貪り読み知識を得たにも関わらず、身についた実感を持つことができていませんでした。しかし、レポートや事業計画などのアウトプットを伴う講義受講を繰り返した結果、実務で使える【知識】として身につきました。

【スキル】は、AirCampusでのディスカッションやレポート作成を通して、文章作成スキルや資料作成スキルと言った基本的なビジネススキルを強化できたことに加え、経営戦略立案や、マーケティング、ファイナンスや人材マネジメントといった、企業・事業を経営していく上での必須スキルを身につけることができました。

【マインド】は、会社や業界が変わっても通用する知識・スキルが身についたことで、今の会社で仮に失敗したとしても、どこかで再起できるんじゃないか、と考えるようになりました。こうしたマインドが身についた結果、今の会社でよりリスクを取ったチャレンジができるようになりました。こうしたチャレンジがさらに相乗効果を生み社内の他部門から相談やアドバイスを求められるなど、活動の場が増えたように思います。また外部のリーダーシップトレーニングに会社代表で派遣されるなど、様々な機会を得られるようになりました。

これまではR&Dや新規事業など、ゼロからイチを生み出す仕事の経験が長かったのですが、8月より、関連の事業会社で経営企画室に配属され、経営者に近いポジションで事業経営を推進しています。これまでのBBTでの学びを生かしつつ、実務面での能力を磨き、将来は経営者としての道を進みたいと考えています。

一度きりの人生、学び続けることは重要なスキル

海外に行くと、社会に出てからも大学などとの関係を継続し、学びつつけている人によく出会います。実際、各国の大学・大学院入学者における社会人の割合に関するデータ(2012年)を見ると、OECD各国の平均が21.1%であるのに対し、日本はわずか2%と著しく低いのが現状です。現在の日本社会が低迷している一因はここにあるのではないでしょうか。テクノロジーがかつてないスピードで進化し、社会が変化していく中、学びを継続しないビジネスパーソンは、絶対に世界では勝てません。

働きながら学ぶことは本当に大変でした。BBT大学院はオンラインで効率よく学ぶことができますが、それでも皆働きながら学ぶことに対して、不安・悩みを抱えながら前に進んでいます。

しかし、BBT大学院で学んでいなければ、知識もスキルも無いまま仕事で成果が出ず、チャレンジ出来るマインドも無く、居酒屋で愚痴を言うだけのサラリーマンになっていたように思います。

人生は一度きり。やりたい事を実現するために、死ぬ前に後悔をしないために、是非飛び込んでみてはいかがでしょうか。

Interview2:周囲の評価

学びを実務に活かしている
MBAホルダーを見て

田中 直 さん
株式会社LIXILグループ 人事総務部門 人事総務部 部長

将来は会社を担う経営者になって欲しい

LIXILグループでは、MBAの取得を奨励しており、海外、国内を問わず、指定対象校に毎年10人程度を派遣するようにしています。ある時、古波鮫さんがBBT大学院に行きたいと相談に来ました。しかし制度上、BBT大学院は派遣対象校では無かったので、費用の援助はできませんでした。

MBA取得費用は、国内といえども決して安いものではないことを承知しています。会社が費用負担するかしないかは、意思決定に重要な要素になると思います。しかし古波鮫さんは、自費でもBBT大学院に入学することを選択されました。

周囲の環境に左右されず、自分自身で考えて出した決断をもとに突き進むパワーが、こういったエピソードに表れていると思います。相手におもねることなく、自分の軸をしっかりと持ち、ぶれない考えを持っています。

MBAを学ぶことは、事業会社でのOJTだけでは経験し得ない様々な知識・スキルを身につけることが、大きなメリットだと思います。古波鮫さんは、そこで得た知識・スキルを新規事業開発で活用し、プログラムの推進に多いに貢献してくれました。
彼には次のステップとして、事業会社で、ひとつの事業をマネージしてもらうことにしました。これからは事業の現場で人の上に立ち、リアルな結果を出していく経験をしてもらいと思ったからです。

このような経験を積んでいくことで、将来は会社を担う経営者になって欲しいと思っています。そのためにも組織を運営する経験をしっかりと積んで頂こうと思っています。それにより、近い将来、事業部を任せることになるでしょう。
小田 憲之 さん
ハングアウト株式会社 代表取締役
株式会社ゼロワンブースター 執行役員

ベンチャー経営者から見ても頼りになる存在

古波鮫さんとは、大企業とベンチャー企業の協業によりイノベーションを実現する「コーポレート・アクセラレーター・プログラム」で1年間ご一緒させていただきました。具体的には、先進的な技術を持つベンチャー企業と、豊富なリソースを持つ大企業が両者の強みを活かすことで、新規事業の立ち上げを促進するプログラムです。ベンチャー企業の技術やアイデアを元に、LIXILグループが保有する様々なリソースをかけ合わせてイノベーションを起こすべく活動を進めてきました。

古波鮫さんと一緒に仕事をしていて、彼は「正しい野心」の持ち主と思いました。

「正しい野心」とは簡単に言うと、我欲にとらわれず、しがらみに左右されず、社会の価値向上の為に動けるという精神です。会社員である以上、会社の方針やなどに従うのは基本です。しかし自分が正しいと思った時は、摩擦をおそれずに主張し、議論することも重要です。彼はそのような姿勢でコーポレート・アクセラレーター・プログラムを推進していました。

1つのエピソードをご紹介すると、アクセラレーター・プログラムでは最後にベンチャー企業がプログラム期間の成果を発表する「デモデイ」を設けています。その際に具体的な製品がある場合は、プロトタイプがあったほうが効果的です。しかし資金力の弱いベンチャー企業には、そのプロトタイプ作成費用が大きな負担になります。そこで、古波鮫さんは当初は用意されていなかったサンプルの予算を会社と交渉して獲得し、各ベンチャー企業がより効果的なプレゼンができる環境を整えました。予算取りには大きな苦労があったと思います。しかし目の前の予算に縛られず、正しいと思ったことはきちんと主張し、実現する力を持たれていると感じました。

結果として、LIXILとの業務資本提携が決まったベンチャー企業もあり、プロトタイプを実際に見せることの効果を実感しました。

またMBAの知識を生かし、ベンチャー企業の経営者と、経営に関する共通言語でコミュニケーションを取られていました。資金調達から組織の作り方まで、経営の事を一通りわかっている新規事業部門の担当者は、ベンチャー経営者から見ても頼りになる存在でした。一方で、大企業側の意思決定のプロセスにも習熟しているので、「デモデイ」にてより効果的なプレゼンを行うために、提案資料をハンズオンで一緒に作り上げていたのも印象的でした。結果として様々な協業が実現しました。

次は事業会社で新たな事に挑戦されると聞いています。リアルな事業をしっかりと経験したあとで、また一緒に新規事業を作り上げる日が来ることを楽しみにしています
PROFILE
古波鮫 大己 さん
株式会社LIXILグループ
1980年、沖縄県宜野湾市生まれ。
2005年、東京農工大学大学院を卒業し、同年、株式会社LIXIL(旧トステム)に入社。 研究部門にてモノづくりから研究戦略立案、未来予測など幅広い業務を経験するも、イノベーションをリアルに生み出せない自分自身に限界を感じ、2012年春、BBT大学院へ入学。2015年、BBT卒業と同時に新規事業開発部門へ異動し、社内事業のカーブアウトを手掛けた後、「LIXILアクセラレーター・プログラム」を立上げ、ベンチャー企業との業務資本提携を含む事業共創を実現。17年8月より、LIXILの社内カンパニーで、介護付き有料老人ホームを運営しているシニアライフカンパニーにて企業変革を推進中。

プライベートでは一男一女の父。BBT入学前後からテレビをほとんど見なくなったが、仮面ライダーとドラゴンボール超の視聴だけは欠かさない。教育やキャリア形成にも関心が高く、社内でプライベートな勉強会を開催しているほか、年に1回、母校の高校でOBとして授業を受け持ち、世界・日本のビジネス環境の変化やキャリアの考え方に関する講義を行っている。
古波鮫 大己
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